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2022年10月31日
助成金

2022年10月1日以降 キャリアアップ助成金の変更点について

本記事では、キャリアアップ助成金の2022年10月1日以降の変更点についてまとめました。

① キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成される助成金です。従業員の処遇改善や生産性向上とも相性が良く、例年とても人気のある助成金です。支給要件が改定される頻度が比較的高い助成金でもあるため、取り組む前にチェックする必要があります。

② 令和4年10月1日以降の変更について

令和4年10月1日の変更により「正社員」「非正規雇用労働者」の定義がそれぞれ厳格化されました。
助成金の対象となる正社員は、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用される必要があります。賞与も退職金も導入していない会社では申請できないことになります。非正規雇用労働者は、「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている者に限ります。賃金の額や計算方法について「個別の雇用契約書で定める」と記載しているだけでは、就業規則等において正社員との違いが確認できず支給対象外となることがあります。

また、「正社員と異なる雇用区分の就業規則」とは具体的には、基本給、賞与、退職金、各種手当等のいずれか1つ以上で、正社員と異なる制度を定めていれば支給対象となります。(基本給の多寡や賞与支給の有無等)

(1)「正社員」と「非正規雇用労働者」の定義が変更

2022年10月1日以降に転換または直接雇用を実施する場合、「正社員」と「非正規雇用労働者」の定義が変更になります。
こちらの変更点については、正社員化コースに加えて、障害者正社員化コースも対象になります。

正社員の定義
9/30まで 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
10/1以降 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
非正規雇用労働者の定義
9/30まで 6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者
10/1以降 賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用 を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者

今後は、正社員と非正規雇用労働者の線引きをより明確なものにする必要があります。その一つとして、賃金体系の見直しが必要になりますが、注意したいのが令和2年4月より適用されている「同一労働同一賃金」です。正社員に「賞与」「退職金」「昇給」を適用させるのであれば、非正規雇用労働者にも導入の検討が必要です。

賞与、昇給の就業規則または労働協約への規定例

第○章 賃金

第〇条(昇給)

1昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年〇月〇日をもって行うものとする。

2顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

第〇条(賞与)

1賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間 支給日
  月   日から   月   日まで 月   日
  月   日から   月   日まで 月   日

2前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

(2)賞与・退職金制度導入コースの変更点

これまでの「諸手当制度等共通化コース」は「賞与・退職金制度導入コース」に名称変更され、諸手当等(賞与、退職金、家族手当、住宅手当、健康診断制度)の制度共通化への助成を廃止し、賞与または退職金の制度新設への助成へと見直されました。

(旧制度)

助成対象制度 ①     賞与
②     家族手当(廃止)
③     住宅手当(廃止)
④     退職金
⑤     健康診断制度(廃止)

(新設制度)

①     賞与
②     退職金

※非正規雇用労働者に対する制度新設のみで助成可(正社員との共通化は必須ではない)

同一労働・同一賃金の問題を解決するためには、賞与・退職金制度導入コースを活用するのもいいでしょう。キャリアアップ助成金は複数コースの併用することも可能です。

(3)短時間労働者労働時間延長コースの変更点

短時間労働者労働時間延長コースは、短時間労働者の週所定労働時間を延長するとともに、処遇の改善を図り、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成されます。社会保険の適用拡大をさらに推し進めるための改正として、支給要件の緩和、助成金の増額措置の延長が行われます。

・延長すべき週所定労働時間の要件の緩和

(従来)週5時間以上  → (変更後)週3時間以上

・助成額の増加措置等の延長

(従来)2022年9月末 → (変更後)2024年9月末(予定)

2022年10月より、短時間労働者の社会保険適用拡大の対象となる事業場の範囲が拡大されますが、短時間労働者労働時間延長コースの活用もお勧めです。

③ 正社員化コースの令和4年4月1日の変更点

有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換、または直接雇用した場合に助成されます。

(1)令和4年度に変更される点とは?

一部停止 有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成を廃止されました。

[変更後]
① 有期 → 正規 : 1人当たり 57万円
② 無期 → 正規 : 1人当たり 28万5千円

拡充 人材開発支援助成金における特定の訓練の修了後に正社員化した場合の加算の対象となる訓練に 「人への投資促進コース」の対象となる訓練(情報技術分野実習併用職業訓練を除く。)を追加されました。

(2)正社員化コースの対象者の変更

正社員の定義

「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要となります。

【現行】
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者

【改正後】
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る

非正規雇用労働者の定義

「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が 必要となります。

【現行】
6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者

【改正後】
賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者 例)契約社員と正社員とで異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い)などが適用されるケース

(3)正社員化コースの対象者

(1) 支給対象事業主に雇用される期間が通算して6か月以上の有期契約労働者

(2) 支給対象事業主に雇用される期間が6か月以上の無期雇用労働者

(3) 6か月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している派遣労働者

(4) 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)によ るものに限る。)を受講し、修了した有期契約労働者等

※有期契約労働者から転換する場合、雇用された期間が3年以内の者に限られます。

(4)申請のながれ

正規雇用等へ転換等した際、転換等前の6か月と転換等後の 6か月の賃金を比較して3%以上増額していることが要件に変更されます。

④ 助成額(1人あたり:中小企業の場合)

① 有期 → 正規:1人当たり57万円

② 有期 → 無期:1人当たり28万5,000円  廃止

③ 無期 → 正規:1人当たり28万5,000円

<①~③合わせて1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人まで>

こんな場合さらに加算もされます。

● 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合
1人当たり28万5,000円<36万円>(大企業も同額)

● 対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合 (転換等した日において母子家庭の母等または父子家庭の父である必要があります)
①:1人当たり95,000円<12万円>、②:47,500円<60,000円>(大企業も同額)

● 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正規雇用労働者へ転換等した場合
①:1人当たり95,000円<12万円>、②:47,500円<60,000円>(大企業も同額)

● 「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に 転換等した場合
1事業所当たり95,000円<12万円>(71,250円<90,000円>) <1事業所当たり1回のみ>

⑤ 助成金申請の代行について

当社では、高いスキルを持つ社会保険労務士のご紹介などサポートします。また会社の事情に合わせた、さまざまな助成金の提案なども行うことができますので、助成金の申請に悩まれているご担当者様は申請のながれや申請料など、ぜひお問い合わせください。

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